まるでマンガみたいな高校駅伝の本当にあった話

 なんだかマンガみたいな話だなぁ。

 いまから5年前の2018年のこと。静岡県韮山高校全国高校駅伝都大路)への出場を決めたという報を聞いたとき、パッと頭に浮かんだのがそんなフレーズだった。

 韮山高校静岡県内でも有数の県立進学校である。

 県内において、スポーツの話題で名前を聞くことはほとんどない。どちらかといえば有名なのはその進学実績だろう。毎年10人近い東大・京大合格者を輩出し、学年の半数以上が国公立大へと進学する。特に理数科は県内トップクラスの偏差値(68、普通科は66)を誇り、スポーツ推薦制度も当然ない。

 そんな“超”のつくような進学校の陸上部で、この年起こったこと――それは、ざっとまとめると以下のような話になる。

「絶対に全国高校駅伝なんか無理だぞ」“偏差値68”県立の超進学校の奇跡…部活では“超無名”、なぜスポーツ推薦ゼロで全国大会に行けた?

「3年前の全中出場者数人が『おれたちで韮山全国高校駅伝に連れて行くんだ!』と地元の公立進学校へ入学し、仲間たちと力を合わせて3年間で全国トップクラスのランナーに成長。その野望の通り、前年の全国大会で6位入賞していた強豪私学を破って初の都大路へとコマを進めた――」

 字面だけ見れば、少年ジャンプやマガジンもびっくりの超展開である。

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高校駅伝5年前の奇跡「えっ? 何が起きたの?」1年生が号泣…“偏差値68”県立進学校が駅伝全国6位の私立高に逆転勝ち、全国大会に行った日

「全国に行ける可能性は、現状30%くらいだと思う」

 2018年の全国高校駅伝都大路)への出場権をかけた静岡県予選の前日のこと。宿舎で韮山高校監督の川口雅司が、部員たちにふとこぼしたそんな言葉は、思わず口をついた本音だったのだろうか。

「だいたいそんなもんかなと思いました。どうしても他の優勝候補校と比べると、韮山の層の薄さは否めなかったですから。まぁ半々ではないよなぁと」

 主将を務めていた小澤大輝も、そう同調する。

 韮山静岡県内でも有数の県立進学校である。毎年10人近い東大・京大合格者を輩出し、学年の半数以上が国公立大へと進学する。特に理数科は県内トップクラスの偏差値(68、普通科は66)を誇り、スポーツ推薦制度も当然ない。

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高校駅伝の奇跡から5年…“偏差値68”県立進学校・伝説ランナー3人は今「なぜ法政大エースは最後の箱根駅伝を前にいきなり“消えた”のか?」

 いまから5年前の2018年。静岡県の県立進学校である韮山高校陸上部は、同校初となる都大路への出場を決めた。スポーツ推薦のない普通の公立校が成し遂げた、まるでフィクションのような“韮山の奇跡”。その中心となった小澤大輝、小木曽竜盛、河田太一平の3人の主力ランナーたちは、今年、大学を卒業する。

 高校時代、チームの主将を務めた小澤はこう振り返る。

「最初は『3人で同じ大学に行けないか』という話をしていたんです。でも、さすがに推薦枠とかの関係でそれは難しいだろうということになって。結果的に3人とも別々の大学で競技を続けることになりました」

 3人に共通した大きな目標のひとつは、やはり箱根駅伝への出走だった。

 12月に最後の晴れ舞台である都大路を終えると、小澤は明治大、小木曽は中央大、河田は法政大と、それぞれが関東の駅伝名門校への進学を果たす。

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 今年の箱根駅伝の2日前。大晦日のことだ。

 この日は早大で、年末恒例の各大学の箱根エントリー漏れ選手たちによる記録会が行われていた。近年では箱根の“0区”とも呼ばれるこの記録会は、翌年以降の本戦出場を目指す下級生や、現役最後のレースとなる上級生たちによる、箱根前哨戦として注目を集めている。

 中大の4年生では唯一、小木曽の姿がそこにあった。

 これまで一度も袖を通すことのできなかった伝統の「C」マーク付きのユニフォームで臨んだ1万m。

 小木曽はそこで、大学4年間を通じ、最初で最後の自己ベストを叩き出した。

 それはちょうど、チームが年間目標としていた「チーム全員で120回の自己ベスト」という目標達成の瞬間でもあった。

「仲間に喉がかれるほどの応援をしてもらって、すごく力になりました。最後だと思うと、できるもんですね(笑)」

 そう本人は嘯くが、ケガに苦しみ続けた4年生が最後の最後で結果を出す――その姿を見て、意気に感じないチームメイトはいなかっただろう。中大の22年ぶりのトップ3となる箱根準優勝の裏には、小木曽の走りが一役買っていたはずだ。

 チームメイトたちからひと際大きな声援を受けた小木曽はこのレース、大学生活で初めてガッツポーズでゴールラインを駆け抜けた。

 その姿は、やっぱりマンガの主人公のようだった。