トランス・ジャパンアルプス・レース(TJAR)優勝者、土井陵(たかし)「4日17時間33分 大会新記録で初優勝」に聞く

 日本一過酷と言われる山岳レース「トランス・ジャパンアルプス・レース(TJAR)」。富山県魚津の日本海から日本アルプスを縦断し、静岡市大浜海岸の太平洋に至る約415km(累積標高差約27,000m)の距離を、制限時間8日間で駆け抜けるエクストリームなレースだ。

 今年の夏、そのTJARで「4日17時間33分」という大会新記録で初優勝したのが土井陵(たかし)だ。剱岳薬師岳を縦走する北アルプスを1日で越え、中央アルプスも1日で通過、多くの選手が歩きを織り交ぜるロード区間もほとんど走っていた。しばらくは更新されないと考えられていた「4日23時間52分」(望月将悟/2016年)という大会記録を6時間も縮めたのだ。

 その背景には、走力や山の経験値といったベースに加え、綿密な食料計画や睡眠の取り方があるようだった。自らを「ミニマリスト」と語る土井のスタート時の装備は水分を除いてわずか3.5kg。他の選手より圧倒的に軽い。たとえば必携装備のボールペンは芯だけ、熊鈴も小ぶりな豆くらいの大きさだ。そして目を引いたのが食料の圧倒的な少なさだ。

「選手は全員レインウエアやツェルト、防寒着など必要な装備は徹底的に軽量化しています。どこで重量に差が生まれるかと言えば食料なんです」

 それでも「決して必要量を減らしているわけではない」と強調する。では土井は415kmのレース中に、実際に何を食べ、どう眠ったのか。現代の飛脚とも呼べる驚異のランナーの秘密に「栄養補給」と「睡眠」の観点から迫った

415kmレースのクレイジーなウラ側…“日本最速ランナー”土井陵は何を食べている?「カップラーメンもスイーツも食べない」「主食は柿の種です」

「4日17時間33分」の行動食リスト公開

 ひとつ驚きの数字がある。土井が摂取したおおよそのカロリーと、レース時に身に着けていたGPS時計がゴール後に割り出した推定消費カロリーの差だ。

 実際に摂取したおおよそのカロリー=17,400kcal
 GPS時計が示した消費カロリー=33,355kcal

 一般的なランナーが必要とする(と時計が推測した)カロリーのほぼ半分で、日本海から太平洋まで走り切ったことになる。

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「1日目は眠らず、2日目は20分睡眠だけ…」“日本新記録で”415km走ったクレイジーランナー・土井陵は全然寝ない男「5日弱で睡眠は計4時間半」

「1日目はほぼ眠らず、2日目は20分だけ…」

――事前にどういう睡眠計画を立てましたか。

土井 今回はどこで何時間寝るかといったおおよその目安と、寝る場所の条件を決めていました。条件の一つはツェルト(簡易テント)を張らないで済むところ、もう一つは標高が低いところです。理由は合理的で、ツェルトを張ると支度にも片付けにも時間がかかってしまうから、標高が高いところで寝ると低酸素によって身体に負担がかかるし身体も冷えてしまうので良質な睡眠がとれないからです。

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