<オリンピック4位という人生(11)> アテネ五輪男子リレー・土江寛裕

'08年にメダルを獲得し、今や日本が世界に伍する種目となった男子4×100mリレー。北京で花開くその4年前、メダルを逸した第1走者が走り続けたレーンの先には――。

Number989号から連載スタートした『オリンピック4位という人生』を特別に掲載します!



 あのスタートの感触は今も曖昧なままで、長らく後悔のもとになっていた。

 男子4×100mリレー決勝。アテネのスタジアムは完全な静寂に包まれていた。日本の第一走者・土江寛裕(出雲高校OB)は神経を耳に集中させると、爆発音と同時に走りだした。

「イギリスのフライングで仕切り直しになった2回目のスタートでした。ただどうしても記憶がおぼろげなんです……」

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