「その」に込めた思いこそ駅伝の精神/酒井俊幸

東洋大陸上競技部監督 酒井俊幸(40)>

 学生スポーツは勝つことがすべてじゃないと思います。では、何を教えるのか。18歳から22歳までのわずか4年間。途中で成人になり、就職にも直面します。

 東洋大の駅伝スローガンは「その1秒をけずり出せ」です。1秒の前に「その」とつけたのには理由があります。「その1秒」、そこに思いを込めろ。「その」と問われた時、何が頭をよぎるのか。誰の顔が浮かぶのか。出来事でも、震災でも故郷でもいい。楽しかったこと、母親との思い出、友人、恋人だって、祖父母との思い出でもいい。自分が勝つという欲のために走るのか、誰かのために耐えるのか。「その」、この2文字にこそ、待っている人のために懸命に走る、駅伝の精神があると考えています。

 

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